禁煙1000日。
日数にすると、2年8ヶ月と25日だ。
俺は2017年5月28日にタバコをやめて、今日で3,348日目になる。1000日目を通り過ぎたのは、もう6年以上前だ。
それでも1000日という数字にこだわるのは、Xで毎日「禁煙◯日目」と数えている人たちを見ているからだ。3日、3週間、3ヶ月という山を越えて、1000日まで来る人はほとんどいない。だからこそ、その日に何が戻っていて、何が戻っていないのかを、実際に通り過ぎた側から正直に書いておきたい。
禁煙1000日は「やめた人」から「吸わない人」に変わる場所
禁煙を始めた頃、俺は自分のことを「禁煙している人」だと思っていた。吸いたいのを我慢している人、という意味だ。
1000日を過ぎたあたりで、この自己認識が変わる。我慢している感覚が消えて、ただ吸わない人になる。コンビニのレジ横にタバコが並んでいても、視界に入らない。飲み会で隣の人が吸っても、羨ましいと思わない。
これは意志が強くなったからではない。選択肢のリストから消えただけだ。1000日というのは、リストから消えるのにかかる時間のことだと思っている。
1000日で戻ってくるお金=約63万円
俺が吸っていたのは1日1箱。当時の金額で計算すると、月19,200円だった。1日あたりにすると約631円になる。
- 1日:631円
- 100日:63,100円
- 1000日:631,000円
- 3,348日(今日):2,113,894円
63万円。これは軽自動車の頭金が払える金額で、家族3人で温泉旅行に何回か行ける金額でもある。俺の場合、3,348日で210万円を超えた。吸っていたら、この210万円は煙になって消えていた。
ここで大事なのは、63万円が「節約できた」お金ではなく、もともと自分の給料から出ていったはずのお金だということだ。増やしたのではなく、漏れていた穴をふさいだ。氷河期世代の40代が給料を63万円上げるのは簡単じゃないが、穴をふさぐのは今日からできる。
1000日で戻ってくる時間=約500時間
お金より気づきにくいのが時間だ。
1本吸うのに、火をつけてから消すまで約5分。1日6本として30分。喫煙所まで歩く時間、ライターを探す時間、コンビニに買いに行く時間を入れると、もっと長い。
- 1日:30分
- 1000日:500時間(約21日分)
- 3,348日(今日):1,674時間(約70日分)
1000日でまるまる3週間が戻ってくる計算になる。3週間の休みを会社からもらうのは無理でも、吸うのをやめるだけで手に入る。
顔に起きたこと
1000日を過ぎたあたりで、久しぶりに会った同僚に「なんか顔色よくなったな」と言われた。
喫煙者特有の、灰色がかった肌とほうれい線の深さはスモーカーズフェイスと呼ばれている。ニコチンで血管が縮んで、皮膚まで血が届きにくくなることが原因だと言われている。
やめて数ヶ月では自分では分からない。写真を見返して初めて「あの頃、顔が土色だったな」と気づく。本人が最後に気づくのがこの変化の厄介なところだ。
唇と歯茎の色
もうひとつ、鏡を見ても意外と気づかないのが唇と歯茎の色だ。喫煙で黒ずんだ唇はスモーカーズリップと呼ばれ、こちらもやめると血流が戻って少しずつ色が変わってくる。
俺の場合、はっきり「戻ったな」と思えたのは1年を過ぎてからだった。1000日の頃には、自分が吸っていた頃の唇の色をもう思い出せなくなっていた。
朝の咳と、寝起き
いちばん早く、いちばんはっきり戻ったのはここだ。
吸っていた頃は、毎朝ベランダで咳をしてから1本目に火をつけていた。それが日常だったから、異常だと思っていなかった。やめて数ヶ月で朝の咳が消えて、そのとき初めて「あれは病気の入口だったんじゃないか」と思った。
寝起きの口の中の感じも変わる。起きた瞬間に感じていた苦い膜がなくなる。1000日目には、そういう「なくなったこと」自体を忘れている。
【正直に】1000日でも戻らなかったもの
ここは盛らずに書く。
①13年吸った事実は消えない。 禁煙を続ければ病気のリスクは下がっていくと言われているが、一度も吸わなかった人と完全に同じ体に戻る、という話ではない。俺は3,348日目の今も、そこは受け入れている。
②吸っていた13年という時間。 お金は計算すれば戻った額が出るが、20代から30代にかけて喫煙所で過ごした時間は戻ってこない。これがいちばん高くついた。
③たまに、吸う夢を見る。 3,348日目の今でも、年に何回か吸っている夢を見て、起きた瞬間に「やってしまった」と青ざめる。夢だと分かってホッとする。1000日を超えても脳のどこかは覚えているということだ。だから「もう1本くらい平気」だけは一生やらない。
④家族に吸わせた煙。 当時、換気扇の下で吸えば大丈夫だと本気で思っていた。加害側だったという事実は、数字では消せない。
今、日数を数えている人へ
1000日を目指している人に伝えたいのは、数えるのをやめないことだけだ。
俺が9年続いた理由は、意志が強かったからではない。やめた分を金額と時間に置き換えて、毎日その数字が増えるのを見ていたからだ。我慢は続かないが、増えていく数字は見ていて楽しい。
そのために自分用の道具も作った。どちらも無料で、登録もいらない。
- 継続日数カードメーカー:やめた日を入れるだけで、日数・浮いたお金・取り戻した時間が入った画像ができる
- 回復カレンダー:やめてからの体の変化を、日数の目安と一緒に並べたもの
そしてもうひとつ。もし身近に1000日を達成した人がいたら、その人を祝ってほしい。
1000日というのは、1000回の夜を越えたということだ。飲み会も、仕事のストレスMAXの月曜も、全部越えている。それなのに、本人のタイムラインには「1000日目」という一行だけが、誰にも気づかれずに流れていくことがある。
俺はそういう投稿を見つけたら、勝手にお祝いのカードを作って贈ることにしている。数えている人だけが、数えている人のすごさを分かるからだ。
40代、まだ間に合う。

コメント