パチスロ4号機はなぜ撤去されたのか|消したのは規制ではなく「検定から3年」の期限だった

営業後のパチスロ店で、台が撤去されて空になった島を見つめる40代の男性 マネー



「4号機時代は本当によく出た」

いまでもSNSでそう書いている人を見かける。ジャグラー、北斗の拳、アステカ2、吉宗——名前を並べるだけで、当時打っていた人間なら何かを思い出す。

俺も打っていた。パチンコとパチスロに20年で720万円溶かしたうちの、どこかにその時代が入っている。正直に書くと、あの頃の自分が「4号機」という言葉を意識して打っていたかどうかは、もう覚えていない。ただ機種が変わり、あるとき店に行ったら見慣れた台がごっそり消えていたことは覚えている。

「射幸性が高すぎたから規制された」——これはよく聞く説明で、間違ってはいない。ただ、それだけでは足りない。規制が強化されたことと、設置されていた台がある日一斉に消えたことは、実は別の出来事だ。

調べた。

結論:消したのは「規制」ではなく「期限」だった

パチスロの営業を規制しているのは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)だ。その第20条第1項にこう書いてある。国会の答弁書に引用されている条文を確認した。

風俗営業者は、その営業所に、著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める基準に該当する遊技機を設置してその営業を営んではならない。

法律が言っているのは、「基準を超えて客を煽る台は置くな」というシンプルな話だ。その基準の中身そのものは、国家公安委員会規則が決めている。

問題はここからだ。基準が変わったからといって、その瞬間に全国の台がすべて違法になるわけではない。

「みなし機」という猶予期間がある

遊技機には、型式に対する検定と、個々の設置機に対する認定という制度がある。ここに、消える理由の核心がある。

2018年、衆議院議員の質問主意書に対して政府が答弁した内容に、こう書かれている(答弁第七〇号)。

改正規則の施行前に認定を受けた遊技機のうち当該認定を受けた日から起算して三年を経過したもの……については、改正規則の施行後、改正規則による改正後の基準が適用される……

整理すると、仕組みはこうなる。

タイミング 何が起きるか
規則が改正された日 新しい基準ができる。ただしその日から即座に違法になるわけではない
検定・認定を受けた日から3年間 経過措置により、旧い基準のまま設置し続けられる
3年が経過した日 新しい基準が適用される。基準を満たさない台はその日から設置してはいけなくなる

この、期限切れのまま現場に残っている台のことを、業界では「みなし機」と呼ぶ。俗称であって、法律用語ではない。4号機が「ある日突然」消えたように見えたのは、規制そのものが強化された日ではなく、この3年の経過措置が切れた日だったからということになる。

なぜ基準が変わったのか

ではなぜ、その基準自体が変わったのか。現在のe-Gov法令検索に登録されている風営法施行規則には、こういう技術上の規格が並んでいる。

四百回にわたり遊技を連続して行った場合において獲得することができる遊技メダル等の数が、使用した遊技メダル等の数の二・二倍を超えることがあるか……

ボーナスがどれだけ連続しても、長い目で見た倍率がここを超えてはいけない、という技術基準だ。数字ひとつで、台の作り方そのものが変わる。

4号機の後期は、この「連チャン」——ボーナスが何度も続けて当たる仕組み——が過熱し、1日で出玉が数千枚を超えるような台が現れたと報じられている。警察庁は2004年(平成16年)に国家公安委員会規則を改正し、答弁書にもあるとおり「全国的な斉一性を確保する観点から」都道府県警察に指導を行った。ここが、4号機の運命を決めた規則改正だとされている。

その後、段階的に基準が引き締められ(業界では4.1号機、4.5号機、4.7号機……と呼ばれている)、2007年7月末をもって、ごく一部の例外を除き4号機はすべて撤去されたと報じられている。⚠️この年月日と経緯は業界メディア・個人ブログの報道にもとづく。条文そのものに「4号機」という区分は出てこない。

「規制されたから消えた」ではなく「更新されなかったから消えた」

ここまで調べて、最初に思っていたイメージが違っていたと分かった。

俺は漠然と、「警察が『この台は危険だからダメ』と一台ずつ止めさせた」のだと思っていた。実際はそうではない。

止めているのは、最初から時限式になっている制度そのものだ。基準が変わっても、既に置かれている台は3年間は合法のまま動き続ける。3年が来たら、更新されない限り自動的に置けなくなる。「悪い台が名指しで摘発された」のではなく、「時間切れになった」。

これは、この前調べた釘を触ってはいけない理由のときにも感じたことと似ている。あのときも、検定を通った盤面と、実際に営業所にある盤面が違うという話だった。パチンコ・パチスロの規制は、いつも「その場で取り締まる」形ではなく、「期限と検定」という書類の上の仕組みで動いている。

みなし機は、今もゼロではない

ちなみに、この「経過措置切れの台がまだ現場に残っている」という状態は、4号機だけの話ではない。答弁書が出た2018年の時点でも、国会で取り上げられるほど「みなし機」は現場に存在していた。規則が変わるたびに、同じ仕組みで新しいみなし機が生まれ、期限が来ればまた撤去される。4号機はその中でも、対象になった台数がいちばん大きかった回、ということになる。

20年打っていて、俺は「検定」の意味を考えたことがなかった

正直に書く。俺はパチンコとパチスロに20年で720万円溶かした。台が変わるたびに「新台が来た」「懐かしい台が消えた」とは思っていたが、その裏で「検定から3年」という期限が動いていることは、今回調べるまで一度も考えたことがなかった。

思えば、換金所が店の外にある理由も、等価交換が禁止された理由も、調べてみれば全部「条文と規則」の話だった。20年通った場所のルールを、俺は一度も自分で読んだことがなかった。

まとめ

  • 風営法20条1項は「射幸心を煽る基準に該当する遊技機を設置してはいけない」と定めている
  • 基準が変わっても、既に検定・認定を受けた台には3年間の経過措置がある(衆議院答弁書・答弁第七〇号で確認)
  • この経過措置が切れたまま残っている台を、業界では俗に「みなし機」と呼ぶ
  • 2004年(平成16年)の規則改正で出玉に関する基準が厳しくなり、全国的な斉一性を確保するため都道府県警察へ指導が行われたと答弁書に明記されている
  • 4号機は2007年7月末に、ごく一部の例外を除きすべて撤去されたと報じられている
  • 「規制されたから消えた」のではなく、「検定・認定の期限が切れて、更新されなかったから消えた」という仕組みだった

20年通って、俺は一度もこの仕組みを知らなかった。

知ったところで、もう打っていない台は戻ってこない。ただ、あの頃「急に消えた」と思っていた台は、実は最初から3年という期限つきで動いていた。気づかなかっただけで、最初から時間切れは決まっていた。

同じように「決めているのは誰か」を調べた記事が、もう1本あります。パチンコ屋はなぜ朝から並ぶのか|店が「今日は勝てます」と言えないからだったこちらは条文ではなく、業界が自分で決めたルールのほうに答えがありました。

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