「パチンコをやめて、何をすればいいのか」
そう検索している人の多くは、たぶんこう思っている。代わりの趣味を先に決めないと、どうせまた行ってしまうと。
だから「パチンコの代わりになる趣味10選」みたいなページを開いて、上から順に眺める。釣り、サウナ、筋トレ、ソロキャンプ。どれもピンとこない。ピンとこないまま週末が来て、また行く。
俺は月3万円を20年、パチンコに払い続けた。720万円だ。
そのうえで、実際にやめた人に一人ずつ聞いてまわって分かったことがある。
順番が、逆だった。
結論:代わりは先に決めなくていい。やめると、後から入ってくる
先に答えを書く。
「代わりを見つけたからやめられた」人に、俺はまだ一人も会っていない。
会ったのは全員、やめるほうが先だった。そして入ってきたものには、2つの型があった。
| 型 | 誰 |
|---|---|
| 後から、新しく入ってくる | 俺(ウォーキング)/バイクの人 |
| 前からあったものに、時間が戻ってくる | サッカーの人 |
どちらにしても、先に代わりを決めた人はいなかった。3人分ある。
① 俺の場合:ウォーキングと、息子とのキャッチボール
パチンコをやめたあと、俺の生活に入ってきたのは2つだけだ。傾斜15・時速4kmで40分歩くこと、それと中1の息子とのキャッチボール。
情けない話だが、どちらも探して見つけたわけじゃない。日曜の朝にぽっかり時間が空いて、手持ち無沙汰で外に出ただけだ。
10選のリストから選んだわけでも、「これなら続きそう」と吟味したわけでもない。
② バイクに乗り始めた人
SNSで、こう書いている人がいた。
「タバコやめた。バイク乗ってからパチンコも行ってない」
読んだとき、順番が気になった。バイクという趣味を先に見つけたからパチンコに行かなくなったのか、それとも逆なのか。本人に聞いてみた。
返ってきたのは一言だった。
「やめてからですね。」
バイクが先じゃない。やめたから、バイクが入る余地ができた。
③ 禁煙3日目でサッカーに行った人
これはタバコの話だが、構造がまったく同じだったので入れておく。
禁煙2日目に、こう書いていた人がいる。
「ヤニ切れで普通に倒れそう。流石にきつすぎるから今からサッカーしにいく」
きつくなってから、その場でサッカーに行っている。事前に「禁煙するからサッカーを始めよう」と計画したわけじゃない。
ここは、この記事を公開した翌朝に本人に聞いて、俺の見立てが外れたところだ。「サッカーは前からですか、それとも禁煙してから始めたんですか」と聞いたら、こう返ってきた。
「前からやっててめっちゃサッカー好きなんですよ」
新しく始めたんじゃなかった。前からあったものに、やめて空いた時間が戻っただけだった。
だから正確に言い直す。代わりは「新しく見つける」ものとも限らない。もともと好きだったのに、パチンコに時間を取られてやれなくなっていたものが、戻ってくることがある。むしろそっちのほうが早い。ゼロから趣味を探す必要がないからだ。
その翌日、同じ人の投稿。
「革命が起きました。(略)ほとんどの人はまだ吸いたい欲が来ると思いますが、俺には来なかった」
あれから10人に聞いた。趣味を「探して」見つけた人は一人もいなかった
この記事を書いたあと、実際にパチンコやスロットをやめた人に「代わりに何が入ったか」を聞いてまわった。10人ぶん集まったので、並べておく。
いちばん多かったのは釣り。しかも3人とも「戻ってきた」
予想外だったのが、3人が釣りを挙げたことだ。しかも3人とも、新しく始めたわけではなかった。
「釣り自体は幼少期から好きだったこともあり、パチ屋より前から行ってたですね。天気悪いとパチ屋に行くみたいな感じで。でも子供が産まれたこともあって外出を控えるようにしてました。子供がある程度大きくなってから釣りを再開したんですけど、パチ屋に行くことはなくなりましたね。パチ屋に消える金は、釣具と子供に」
この人の場合、順番が逆だった。釣りが先にあって、パチンコのほうが「天気の悪い日の代わり」だった。やめたのではなく、元の場所に戻っただけだ。
「私もスロカスを辞めてなかなか暇です。もともとしてた釣りの頻度を上げましたが、平日暇で暇で」
「パチンコやめるために色んなことにチャレンジしてみましたが、釣りが1番でした!」
ほかの7人も、ほとんどが「元々あったもの」だった
- バイク「パチンコ代が勿体ないと思える趣味を見つけられたら自然に辞められる。自分はバイクを始めてパーツが欲しくて辞めました。ちなみにパチ歴30年くらいでした」
- ウォーキング「ウォーキング始めて辞めましたね」
- ドライブ・ツーリング「パチンコに金を使うよりは飯代やガソリン代のほうが安上がり」
- ゲーム・漫画・日帰り旅行・料理「パチンコより遥かに安い値段で楽しめるので満足してます」
- FX「競馬・パチンコ・競輪・ボート・オートやってましたが、FX始めたらどれも興味無くなりました」
- 投資「1日で何十万、何百万と資産が変動するようになったら、パチンコ店に行って何時間も座って1日数万円しか増えないのが…」
- 子供との時間「子供が産まれてパチ屋に行かなくなって」
並べてみて分かったことがある。「よし、趣味を探そう」と考えて成功した人が、一人もいない。
子供が生まれた。元々好きだったものが戻ってきた。別のものに興味が移った。バイクのパーツが欲しくなった。全部、やめたあとに起きている。
いちばん正直だった一言
1000回以上やめたことがある、という人がいた。その人が、いま最長記録を更新中だという。理由がこれだった。
「今が最多記録更新中で3ヶ月は立ちます! ギャンブルできない環境にきて、ようやっと違う趣味ができました!」
「ようやっと」という言葉に、順番が全部入っている。環境が先に変わって、そのあとで、ようやく趣味ができた。
ただし、入れてもすぐには埋まらない
正直に書いておくと、代わりが入れば即日楽しくなる、という話ではない。
さっきの「もともとしてた釣りの頻度を上げましたが、平日暇で暇で」がまさにそれだ。別の人はもっとはっきり書いていた。
「ゲームや漫画を楽しんでる最中でもパチンコをやりたい、大当たりしたときの快感を味わいたい、というような思考が常に残ってる感じでした。なので眼の前にある娯楽を100%楽しめていない」
この人はそのあと「だいたい1年くらいで消えた」と言っている。その話は別記事にまとめた(「ギャンブルをやめたらつまらない」は本当だった|楽しめるようになるまで約1年)。
つまり、こうなる。代わりは後から入る。ただし、入ったものを楽しめるようになるまでには、もう少しかかる。
そもそも俺は「パチンコをやめよう」と決めていない
ここが、この記事でいちばん書きたいところだ。
俺がパチンコに行かなくなった理由は、負けたからでも、家族に泣かれたからでもない。
タバコをやめたからだ。
パチンコ屋は、隣の台の人間が吸う。こっちが吸っていなくても煙は来る。せっかく数えている日数が汚れる感じがした。それに、吸える場所にいると自分も吸いたくなる。
だから離れた。「パチンコをやめる」と決意したんじゃない。行く理由のほうが先に消えた。
意志で勝ったわけじゃないから、我慢した記憶もない。この話はパチンコがやめられないのは意志が弱いからじゃないにも書いた。
空くのは「時間」と「金」。数字にするとこうなる
代わりを探す前に、まず何がどれだけ空くのかを知っておいたほうがいい。
| 浮くもの | 1年ぶん |
|---|---|
| お金 | 約36万円(月3万円×12ヶ月) |
| 時間 | 約300時間(1回4時間×週1.5回×50週) |
年36万円と300時間が、行き先を失って宙に浮く。
問題は、この「浮いたもの」を放っておくと、勝手に別のところへ流れていくことだ。
Googleの検索候補が、正直に教えてくれる
「パチンコ やめて」と検索窓に入れると、候補にこう出る。
- パチンコ やめて 競艇
- パチンコ やめて 競馬
- パチンコ やめて 宝くじ
- パチンコ やめて メダルゲーム
- パチンコ やめて 株
- パチンコ やめて nisa
- パチンコ やめて 筋トレ
上から4つは、全部ギャンブルだ。
これは誰かが勝手に作ったリストじゃない。実際にそう検索している人がいるから候補に出ている。つまり、やめた人のかなりの数が、別の台に横滑りしている。
病院のサイトにも、業界の相談窓口にも、この話は書いていない。書けないんだと思う。「やめた人が競艇に移りました」は、彼らの立場では失敗の話になってしまうから。
でも、やめた側から見れば、これはただの事実だ。浮いた36万円と300時間には、必ず行き先ができる。決めないなら、勝手に決まる。
いちばん正直なこと:入ってきたものに、成果を求めなくていい
ここは、ほかの「趣味10選」の記事には絶対に書けないと思うので、正直に書く。
ウォーキングは、パチンコをやめた頃から今日まで続いている。週4回。
じゃあ体はどうなったのか。2026年7月17日から実際に測ってみた(2026年8月20日時点の実測)。
| 開始時(7/17) | 8月の平均 | |
|---|---|---|
| 体脂肪率 | 24.4% | 24.8% |
| 体重 | 68.8kg | 69.02kg |
増えている。
週4回、傾斜15の坂を40分歩いて、1ヶ月で体脂肪は0.4ポイント増えた。詳しい記録は「年内に体脂肪15%」の目標を11日で下ろした話に全部書いた。
普通ならここで「効果がないからやめる」となる。
ならなかった。成果を期待して始めたものじゃないからだ。
もし俺が「パチンコの代わりに、痩せる趣味を探そう」と考えて始めていたら、数字が動かなかった3ヶ月目にやめていたと思う。成果を求めなかったから、今日まで残った。
これが、代わりを先に探すことのいちばんまずいところだ。先に探すと、選ぶ基準が「効果がありそうか」になる。効果で選んだものは、効果が出ないと消える。
明日、ひとつだけできること
だから、俺が言えることはひとつしかない。
次の休み、パチンコに行っていた時間だけ、家にいない。
行き先は決めなくていい。コンビニでも、川沿いでも、図書館でもいい。決めるのは「行き先」じゃなくて「その時間、あの店にいない」ことだけだ。
そのうち、何かが入ってくる。俺の場合は坂道と、息子のグローブだった。何が入ってくるかは、たぶん人によって違う。
子どもがいる人なら、父親がパチンコに使う4時間で、子どもとできる32のことに具体的な中身を書いた。ただしあれは「先に選ぶリスト」じゃない。空いた時間に、後から入ってくるものの一覧として読んでほしい。
やめ方そのものはパチンコのやめ方|720万円溶かした氷河期40代が実践した7ステップにまとめてある。
まとめ:順番は「やめる → 空く → 入ってくる」
- 代わりの趣味を先に決めなくていい。決めてからやめた人に、俺はまだ会っていない
- 実際に聞いた3人は全員、やめるほうが先だった。入ってきたものは「新しく始めたもの」と「前から好きだったのに、やれなくなっていたもの」の2種類
- 俺自身、パチンコを「やめよう」と決めてすらいない。タバコを守るために離れたら、行かなくなっていた
- 浮くのは年36万円と年300時間。決めないと、勝手に別の台へ流れる
- 入ってきたものに、成果を求めない。俺のウォーキングは今日まで残って、体脂肪は1ミリも減っていない
最後にもうひとつ。俺は健康のためにやめたんじゃない。
やめてから、健康を気にする人間に変わった。
これも順番が逆だった。たぶん、そういうものなんだと思う。
40代、まだ間に合う。
やめたあと「何をしても楽しくない」状態が続いている人は、こちらも読んでほしい(やめた人に聞いたら、楽しめるようになるまで約1年かかっていた)。
この順番は、もっと大きな母数でも同じでした。240件を数えた結果でも、趣味を探して見つけた人はやはりほとんどいませんでした。


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