パチンコの等価交換を禁止する法律は、どこにもなかった|20年打った40代が風営法19条を読んだら、決まっていたのは「玉1個4円」と「9,600円」だけだった

パチンコ店の景品交換カウンターで交換レシートを見つめる40代の男性。等価交換は、なぜ禁止?4円 依存克服



「この店、等価じゃないんだ」

20年通っていて、何度もそう思った。同じ4円で借りた玉を、片方の店では4円で引き取ってくれて、もう片方では3.5円にしかならない。県境をまたいだだけで変わることもあった。

そのとき俺は、こう思っていた。法律で決まっているんだろう、と。

調べた。結論から書く。

等価交換を禁止する法律は、どこにもなかった。

結論:法律が決めているのは「4円」と「9,600円」だけ

パチンコの営業を規制しているのは風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)だ。その第19条に、こう書いてある。

第二条第一項第四号の営業を営む風俗営業者は、国家公安委員会規則で定める遊技料金、賞品の提供方法及び賞品の価格の最高限度に関する基準に従い、その営業を営まなければならない。

「国家公安委員会規則で定める」とあるので、その規則も読んだ。風営法施行規則の第36条だ。

施行規則36条が決めていること 中身
2項|遊技料金の上限 ぱちんこ遊技機は、玉一個につき四円
回胴式(スロット)は、メダル一枚につき二十円
3項|賞品価格の上限 九千六百円に消費税等相当額を加えた金額を超えないこと

これで全部だ。

つまり法律が決めているのは、「貸すときの値段の上限」と「景品の値段の上限」の2つだけ

「いくらで引き取るか」——つまり交換率については、条文に一言も出てこない。

では、誰が禁止したのか

禁止したのは、都道府県ごとの遊技業組合だ。法律ではなく、業界の申し合わせである。

報じられているところによると、2011年10月1日に大阪府下のホールで等価交換が原則禁止となり、翌月には東京がこれに続いた。その後、消費税の引き上げに合わせて他の道府県にも広がったとされている。

⚠️ここは日付を含めて業界メディアの報道にもとづく。条文には書かれていない。だから「報じられている」と書く。

「一物一価」という言葉が出てきた

調べていて何度も出てきたのが、一物一価という言葉だ。

同じ店の中で、パチンコとスロットで交換率が違う。あるいは特定の景品だけ有利になっている。そういう状態をやめて、ひとつの店では同じ価値で交換しろ、という話だ。

2012年ごろから、警察庁が一物一価の徹底を求めて厳しい姿勢を示すようになったと報じられている。

ここで注意したいのは、一物一価と等価交換禁止は別の話だということだ。一物一価は「店の中で価格をそろえろ」。等価交換禁止は「4円で貸したものを4円で引き取るな」。混ざって語られていることが多い。

なぜ「県によってバラバラ」になるのか

ここが、この記事でいちばん書きたかったところだ。

法律で決めていないから、県ごとに違う。それだけなら話は単純だ。ところが、もう一段ややこしい事情がある。

都道府県単位で交換率をそろえようとしたら、独占禁止法で禁じられているカルテルに当たるとして、公正取引委員会の指導が入ったケースがあると報じられている。

整理すると、こうなる。

状況
法律で禁止する ❌ そんな条文はない
組合で申し合わせる ⭕ 実際にこれをやっている
県内で価格をそろえる ⚠️ やりすぎると独禁法のカルテルになる

法律でもなく、かといって完全にそろえることもできない。その中間に落ちた結果が、いまの「県によってバラバラ」だ。

組合に入っていない店が、非等価の地域で等価営業をしている、という話もある。申し合わせは、組合の外には届かない。法律ではないのだから、当然そうなる。

知恵袋の答えは、半分だけ当たっていた

この件を検索すると、上位に知恵袋が出てくる。そこでいちばん支持されていた答えは、要約するとこうだった。

100円で仕入れた商品を100円で売ったら、利益が出ない

店の利益の話としては、まったくそのとおりだ。等価をやめれば、その差額はホールに残る。

ただ、この説明では「なぜ県によって違うのか」が説明できない。利益が理由なら、全国どこでも同じようにやるはずだ。

実際には、組合の申し合わせという単位で決まっているから、県境で変わる。ここまで含めて、やっと説明がつく。

20年打っていて、俺は一度も条文を読まなかった

正直に書く。俺はパチンコに20年で720万円溶かした。等価の店にも、非等価の店にも通った。

それなのに、なぜ交換率が違うのかを一度も調べなかった。「そういうものだ」と思っていた。

店を選ぶ基準に交換率は入れていたのに、その数字がどこから来ているかは考えたことがなかった。毎日触っているものほど、理由を考えない。

これは換金所がなぜ店の外にあるのかを調べたときも、釘を触ってはいけない理由を調べたときも、まったく同じだった。20年いた場所のことを、俺は何も知らなかった。

まとめ

  • 等価交換を禁止する法律はない。風営法19条と施行規則36条が決めているのは「玉1個4円」と「賞品9,600円+消費税」の2つだけ
  • 交換率について、条文は一言も書いていない
  • 禁止したのは都道府県ごとの遊技業組合の申し合わせ。報じられているところでは2011年10月1日に大阪、翌月に東京が続いた
  • 一物一価(店内で価格をそろえる)と等価交換禁止は別の話。混ざって語られやすい
  • 県でバラバラなのは法律ではないから。しかも県内でそろえようとすると独占禁止法のカルテルになると指導された例があると報じられている
  • 組合に入っていない店には申し合わせが届かないため、非等価地域でも等価営業が起きる

20年通って、俺は一度もこれを知らなかった。

知ったから何かが変わるわけではない。ただ、あの数字は誰かが会議で決めていたということだけは、覚えておこうと思う。台の上で起きていたことは、ほとんど全部、台の外で決まっていた。

40代、まだ間に合う。


【この記事で使った出典】

  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第19条(e-Gov法令検索で条文を確認)
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(昭和60年国家公安委員会規則第1号)第36条第2項・第3項(同上)
  • 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)
  • 等価交換禁止の時期・警察庁の姿勢・公正取引委員会の指導については、業界メディアおよび百科事典等の記述にもとづく

条文として確認できたものと、報道にもとづくものを本文中で書き分けています。日付や経緯は報じられている内容であり、法令の条文ではありません。

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