「禁煙 40日目」で検索してここに来たなら、たぶん今つらい。
40日続いている。体はもう楽になっているはずだ。なのに、まだ吸いたい。もしかしたら今日、1本か2本吸ってしまったのかもしれない。
検索すると、どのページにも同じことが書いてある。離脱症状のピークは2〜3日。2週間で身体的な依存は落ち着く。1か月を超えれば、あとは習慣との戦い。
そのとおりなら、40日目の自分は何なのか。
先に結論を書く。40日目は、あの表が終わったあとに来る日だ。だから、どの表にも載っていない。載っていないだけで、あなたが失敗したわけではない。
1ページ目を9本とも開いて、数えた
今朝、「禁煙 40日目」で出てくる検索1ページ目を、9本とも開いた。
クリニックのページの時系列は、こうなっていた。
禁煙1日目/2〜3日目(離脱症状が最も強く出やすいピーク期)/4〜7日目/2週間〜1か月/1か月以降
最後の欄には、こう書いてある。「1か月以降は、離脱症状より”習慣”との戦いになる」。
40日目は、この「1か月以降」の中に飲み込まれている。40という数字は、どこにも出てこない。
9本の内訳も書いておく。クリニックと自治体が4本。うまくいった人の報告が2本。残りの3本は、知恵袋とReddit——つまり、つまずいた人の書き込みだった。片方は「40日目で2本吸ってしまった」という質問。もう片方は「27日目、今のところ一番つらい。助けて」という投稿だ。
検索している人はそちら側にいるのに、1ページ目で答えているのは一般論と成功報告しかない。だから、ここに書く。
37日目の人に聞いた
俺は毎晩、やめた日を数えている人に話を聞いている。昨日聞いたのは、禁煙37日目の方だった。
その人が禁煙を始めたきっかけは、応援していた配信者が禁煙を始めたことだった。そしてその配信者が、先に禁煙をやめた。理由のほうが、先にいなくなったことになる。それでも37日目を数えていた。
「その人がやめたと知った日、吸いたくなりましたか」と聞いた。返ってきたのが、これだ。
基本的にずっと吸いたいですし、やめた話を聞いた瞬間、だいぶ濃いめの豚骨ラーメンを食べた後のあの吸いたさが帰ってきました。
が、吸ってません。何故かは自分でもあんまりわかんないです。
ここを読み違えないでほしい。吸いたさは消えていない。37日たっても、ずっとある。
消えていないのに、吸っていない。しかも本人にも理由が説明できない。
40日目に「まだ吸いたい」のは、失敗のサインではない。その状態のまま続いている人が、現にいる。
46日目の人——いつもの手が効かない日が来た
別の方に、禁煙46日目の話を聞いたことがある。
最初のころは、吸いたくなっても深呼吸をしばらくすれば治っていた。ところがある日、15分我慢しても治らなかった。何とか我慢できそうになったのは、寝て起きてからだったという。
ここは俺が一度読み違えたところなので、正確に書いておく。最初、俺はこれを「40日を過ぎると深呼吸が効かなくなる」と受け取った。本人に確かめると、違った。効かなくなったのではなく、効かない日が来たのだ。吸いたさが来るのは、気圧で気分が落ちて「何か頼りたくなってしまう」ような日だという。
いつもの手が全部だめになったわけではない。その日だけ、届かなかった。
だから「前は我慢できたのに」と思う日があっても、意志が落ちたしるしとは限らない。吸いたくなるのは暇な時間ではなく「切り替え」の瞬間だったという話を5人から聞いたことがある。40日を過ぎても、そういう瞬間や、そういう日は来る。俺の見立てでは、それは日数だけでは消えない。
4か月の人——40日は、山と山の谷間だった
禁煙4か月の方は、こう言っていた。
3日目、3週間目、3カ月目が山だった
山が1つではなく、3つある。そして並べてみると、40日目はどこにも入っていない。
3週間目の山は過ぎている。3か月目の山は、まだ先だ。40日目は、山と山のあいだにいる。
谷間がつらいのは、登っているからではなく、終わったと思っていたのに終わっていないからだと思う。ただしこれは俺の解釈で、本人がそう言ったわけではない。
ただし、全員ではない
正直に書いておく。
別の方は「3日間過ぎる頃には全く吸いたくなくなった」と言っていた。本当に3日で消えた人がいる。
逆に、禁煙2か月の方は「今でも強烈に吸いたくなります(笑)」と書いていた。
4人に聞いて、山の位置は全員違った。3日で終わった人。山が3つある人。46日目に、いつもの手が効かない日が来た人。2か月たっても強烈に来る人。
だから「40日目はつらいもの」とは書けない。書けるのは、40日目にどうなっているかは人によって違う、ということだけだ。禁煙で仕事にならない人と平気な人の分かれ目を5人に聞いたときも同じだった。分かれ目は意志の強さではなく、どこで吸っていたかだった。
俺がこのブログに書いたことは、雑だった
ここは書かないと不公平なので書く。
俺は禁煙1週間の記事で、こう書いた。「最初の3日が地獄。でも4日目から世界が変わる」。勝負は最初の3日だ、そこさえ越えればごほうびが待っている、と。
取材した4人のうち、それが当てはまったのは1人だけだった。
俺自身の体験としては嘘ではない。3日目までがきつくて、4日目ににおいが戻ってきた。ただ、それを全員の順番のように書いたのは雑だった。
あの記事を読んで「4日目から楽になるはずなのに、40日目の自分はおかしい」と思った人がいたなら、それは俺の書き方のせいだ。
理由のほうが、先に消える
37日目の人の話に戻る。
やめるきっかけになった人が、先に降りた。それでも数えている。
俺は13年吸って、4回失敗して、5回目でやめた。4回とも「健康のため」「家族のため」で始めた。そして4回とも、その理由のほうが先に薄くなって戻った。
外に置いた理由は、だいたい先に消える。健康は忘れる。不安には慣れる。応援していた人は降りる。
40日目まで来た人は、たぶんもう、始めたときの理由では続いていない。理由が消えたあとも続いているから、40日目にいる。
そして、それを本人は説明できない。37日目の方の「何故かは自分でもあんまりわかんないです」は、たぶんそういうことだと思っている。
3,404日目の俺は、健康のためにやめたとは言わない
今日で3,404日目になる。9年と4か月だ。
4回失敗した禁煙は、4回とも「健康のため」「家族のため」で始めた。そして4回とも戻った。
5回目は違った。順番が逆だった。やめてから、健康を気にする人間になった。理由はあとから来た。
禁煙を守るために、20年通ったパチンコ屋にも行かなくなった。隣の台の人が吸っていて、座っているだけで煙を吸うことになる。それではやめた意味がないからだ。
40日目の人に言えるのは、これだけだ。始めたときの理由が消えても、別の理由があとから来ることがある。俺の場合は、健康がそれだった。1000日を超えたころに何が戻って何が戻らなかったかも数えてある。
まとめ|40日目にいる人へ
- 40日目は、離脱症状の表が終わったあとに来る。だから検索しても載っていない。載っていないことと、失敗したことは別だ
- 37日目の人は「ずっと吸いたい。が、吸っていない」と言った。吸いたさが残っているのは、失敗ではない
- 46日目の人は、深呼吸で治っていたのに、15分我慢しても治らない日が来た。手が効かなくなったのではなく、効かない日が来た
- 4か月の人は、山は3日目・3週間目・3か月目の3つだと言った。40日目は谷間で、次の山はまだ先にある
- ただし3日で消えた人もいる。全員には当てはまらない
もし今日、1本吸ってしまったなら。そこで終わりかどうかは、まだ決まっていない。1本吸ってしまった6人に聞いたら、そこで終わった人と終わらなかった人が両方いた。
40日目は、表の外にある。表の外にいるのは、あなただけではない。
10日手前の話も書いた。30日目の人が「水もお茶もコーヒーも効かない」と書いていた。3つとも口の手だった。禁煙30日目、まだ吸いたい人へ|水もお茶もコーヒーも効かないのは、手が全部「口」だからかもしれない
この先の話も書いた。まず、10日先の話。46日目の人には、いつもの手が効かない日が来た。91日目の人は、手を2段にしていた。禁煙50日目、吸いたい気持ちが収まらない人へ|いつもの手が効かない日は来る。91日目の人は手を2段にしていた
そして100日まで行くと、減っているのは吸いたさではなく手間のほうだった。禁煙100日、目に見える変化はあるか|89日目の人に聞いたら、変わったのは体ではなく「店の選び方」だった


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