「ギャンブルをやめたらつまらない」は本当だった|やめた人に聞いたら、楽しめるようになるまで約1年かかっていた

リビングでゲームのコントローラーを持ったまま手が止まっている40代の男性のイラスト。ギャンブルをやめても楽しめるようになるまで約1年かかる 依存克服

パチンコをやめた。スロットをやめた。競馬をやめた。

それ自体は達成したはずなのに、やめてしばらく経った今、こう思っている人がいる。

「で、これから何を楽しみに生きればいいんだ」

検索してみると、この状態にいる人はかなり多い。「ギャンブルをやめたら『暇』が一番つらい」「やめたら人生クソつまらん」。Yahoo!知恵袋の1位は、こういう質問だった。「ギャンブル辞められた方、今はなんの趣味をしてますか」

俺はこの1週間、まさにその質問を、実際にやめた人に直接ぶつけてまわった。答えてくれたのは4人。全員が「代わりに何が入ったか」を書いてくれた。

そして、いちばん知りたかったことにも答えが返ってきた。「つまらない時期は、どれくらい続くのか」だ。

結論:約1年。そして代わりは「探して見つける」ものではなかった

先に答えを2つ書く。

①「何をしても100%は楽しめない」時期は、だいたい1年で消える。

②その間に入る「代わり」は、探して見つけたものではなく、環境が変わったあとに勝手に生えてきたものだった。

20年やって720万円溶かした俺自身、この2つをきちんと聞いたのは今回が初めてだった。順番に書く。

「娯楽を100%楽しめていない」

いちばん詳しく書いてくれたのは、タバコもパチンコも両方やめた方だった。

まず「やめたあと、代わりに入ったものは何ですか」と聞いた。返ってきたのはこれだ。

「パチンコの代わりにゲームしたり、ネカフェで漫画を読んだり、日帰り旅行したり、料理したりなどなど。パチンコより遥かに安い値段で楽しめるので満足してます

ここまでなら、よくある「代わりを見つけよう」で終わる。だがこの人は、続けてこう書いていた。

ただし、パチンコ中毒者はこれらを楽しめないと思います。それはアホみたいに言ってる『脳汁』。パチンコ大当たり時にでると言われてる脳汁という麻薬物質の刺激が強すぎて、それに慣れてしまうと、日常生活の多くのことが楽しめなくなる。酒やタバコもだいたい似たようなもの」

同じ趣味が、効く人と効かない人がいることになる。そこでもう一段聞いた。「やめた直後から楽しめましたか。それとも、しばらく何をやってもつまらない時期がありましたか」

「感覚的にいえば、ゲームや漫画を楽しんでる最中でもパチンコをやりたい、大当たりしたときの快感を味わいたい、というような思考が常に残ってる感じでした。なので眼の前にあるゲームや漫画などの娯楽を100%楽しめていない。そんな感じでした」

つまり、代わりはちゃんと入っていた。それでも、しばらくはその代わりを100%は楽しめなかった。そして今は「安い値段で楽しめるので満足」と書けるところまで来ている。

同じ人が、時期によって正反対のことを言っている。矛盾ではなく、通過した順番の話だ。

では、その時期はどれくらい続くのか。「約1年」だった

いちばん聞きたかったのはここだった。「その”100%楽しめていない”感じは、どれくらいで消えましたか」

だいたい1年くらいパチンコ屋に入らずにいたら消えました。パチンコに行って楽しむ、という選択肢そのものが脳内から消えたんだと思ってます」

1年。

そして消え方の説明が正確だと思った。「我慢できるようになった」ではない。「選択肢そのものが脳内から消えた」。行かないと決めているのではなく、行くという発想が出てこなくなる。

面白いのは、同じ週にまったく別の依存で、まったく別の人が、同じ数字を言っていたことだ。

断酒483日目の方に「いちばん危なかったのはどういう日でしたか」と聞いたときの答えがこれだった。

「私はどちらかというと嫌な事があった日が危険でした。今はそれも落ち着きましたが、まだまだ油断は禁物ですね。1年経ってからはグッと楽になりました

パチンコで1年。酒で1年。別の人が、別の依存で、同じ区切りを言っている。n=2なので断定はしないが、覚えておく価値のある数字だと思う。

ちなみにこの方には「特別な日がきついのでは」と聞いたのだが、外れた。息子さんの20歳の誕生日についても「一緒に飲んでみたかったなぁくらいで、飲酒欲求はありません」と返ってきた。きついのは記念日ではなく、嫌なことがあった日だった。

ただし、全員ではない

正直に書いておく。この記事を出したあと、別のスレッドでこう書いている人を見つけた。

「やめて3年くらいたつ。それでも毎日いきたいなとおもう。大負けしてそれ以来」

1年で消えた人と、3年たっても毎日来る人が、同じ場所にいる。だから「1年経てば楽になります」と約束はできない。言えるのは「1年で消えた人が実際にいた」までだ。

それでも、この数字は置いておく価値があると思っている。いま「何をしても楽しくない」人がいちばん知りたいのは、たぶん「これは一生続くのか」だからだ。少なくとも、一生ではなかった人がいる。

代わりは「探して見つけた」人が一人もいなかった

ここがもう一つの発見だった。4人の「代わり」を並べると、共通点が出る。

釣りと、子供。

「天気が悪いとパチ屋に行く、みたいな感じで。でも子供が産まれたこともあって外出を控えるようにしてました。子供がある程度大きくなってから釣りを再開したんですけど、パチ屋に行くことはなくなりましたね。パチ屋に消える金は、釣具と子供に」

順番をよく読んでほしい。釣りを見つけたからパチンコをやめたのではない。子供が生まれて外出が減り、パチ屋から足が離れ、そのあとで元々好きだった釣りが戻ってきている。

FX。

「競馬・パチンコ・競輪・ボート・オートやってましたが、FX始めたらどれも興味無くなりました

この方は正直で、こうも書いていた。「ギャンブルは自然と興味なくなり(そもそも辞めてるのか? FXは投資? ギャンブル?)」。本人にも、やめたのか乗り換えたのか分かっていない。

並べてみると、「よし趣味を探そう」と考えて成功した人は、この中に一人もいない。子供が生まれた。元々好きだったものが戻ってきた。別のものに興味が移った。全部、あとから起きている。

1000回やめた人が、いま3ヶ月続いている理由

この話を決定づけたのが、5人目の言葉だった。

最初に聞いたとき、この人はこう答えていた。

ギャンブルは1000回以上はやめてますよ!なので、やめたあとのかわりは基本ギャンブルですね!」

1000回以上やめている。つまり1000回以上戻っている。代わりに入れたものが同じものなら、やめた回数だけが増えていく。

だが、続きがあった。「1000回の中で、いちばん長く空いたのはどれくらいですか」と聞いたら、こう返ってきた。

今が最多記録更新中で3ヶ月は立ちます! ギャンブルできない環境にきて、ようやっと違う趣味ができました!

1000回失敗した人の、いまが最長記録。そしてその理由が「ギャンブルできない環境にきて」だ。

趣味が先ではない。環境が先で、趣味は「ようやっと」あとから出てきている。本人の言葉づかいがそのまま順番を表している。

俺の場合。720万円やめて、日帰り温泉は普通に楽しめた

正直に書いておく。

俺は20年で720万円溶かしてパチンコをやめた(ギャンブルの生涯負け額は1,440万円)。金額だけ見れば、この記事に出てくる誰よりひどい。

それなのに、やめた後の「何をしても楽しくない1年」を、俺はほとんど覚えていない。日帰り温泉も、息子と出かけるのも、普通に楽しめた。

最初は意志が強かったからだと思っていた。今回聞いて、そうではないと思った。たぶん俺は、脳が慣れきる手前で降りただけだ。

俺は台の前で「勝ちたい」と思っていた時間より、「その3時間だけ誰にも呼ばれない」ために座っていた時間のほうが長かった。電話が鳴らない場所として使っていた。だから、店に行かなくなった時点で用が済んだ。

自慢ではない。同じ720万円でも、抜け方の難易度は人によってまったく違うという話だ。金額は、きつさの物差しにならない。

「代わりを先に探す」だけでは足りなかった

以前、パチンコをやめて何する? 代わりを先に探すのは順番が逆だったという記事を書いた。やめる前に趣味を用意しようとすると、たいてい失敗する、という話だ。

今回の取材で、その理由がはっきりした。

やめる前に代わりを用意しても、その時点の脳は、まだ強い刺激に慣れている。だから何を持ってきても物足りない。「代わりが見つからない」のではなく、「今はまだ何を持ってきても100%楽しめない」が正確だ。

順番はこうなる。

  1. 環境を変える(店に行かない・行けない場所に身を置く)
  2. 何をしても100%は楽しめない時期を、約1年かけて通過する
  3. そのあとで、安いものが普通に楽しくなる。代わりは、そこで勝手に生えてくる

2番を知らずに始めると、「代わりを見つけたのに楽しくない=失敗した」と判断してしまう。実際には、それが通過中の正常な状態だ。

禁煙の側で157回失敗して158回目にやめた人が、こう言っていた。「気がついたら、欲しがらない身体になるまで過ごした。我慢でなく、通過したくらいの感覚です」。依存の種類は違うが、形は同じだと思う。

まとめ:つまらないのは、失敗ではなく通過中だから

  • 「何をしても100%楽しめない」時期は約1年で消える(パチンコ1人・酒1人が同じ「1年」)
  • 消え方は「我慢できるようになる」ではなく「選択肢そのものが脳内から消える」
  • 効いた代わりは全部あとから来たもの。趣味を探して成功した人は一人もいなかった
  • 1000回やめた人の最長記録が更新中の理由も「ギャンブルできない環境にきて」だった
  • やめた直後がいちばん危ないのは記念日ではなく「嫌なことがあった日」

今つまらないなら、それはやめ方を間違えたからではない。まだ2番を通過している最中だからだ。そして通過には、だいたい1年かかる。

やめ方そのものを整理したい人はパチンコのやめ方7ステップを、「意志が弱いから続かないのでは」と思っている人はパチンコがやめられないのは意志が弱いからじゃないを読んでほしい。

40代、まだ間に合う。

そもそも、どうやって行かなくなったのか。行かなくなった130人の内訳を数えたら、意志でやめたと書いたのは1人だけでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました